I'm fine. and you? | 2025.09.24

映画「国宝」が 呼び覚ますもの。

舞踊家 谷口裕和

最初に依頼があったのは?

初めて監督にお目にかかったのは2022年の秋ですね。その時に「生まれた時から歌舞伎俳優に見えるように指導して下さい」と依頼されました。踊る時以外にも、所作には品格から何から全部が出てしまうから、それも含めて教えていただきたいというお話しで、1年半ほど前から指導させていただきましたね。

「国宝」のポスターと。
「2人に生演奏で踊る体験をして欲しくて、
2023年の暮れの三越劇場での僕の公演の本番前に踊ってもらいました」。

未経験者である主演の2人にどのような指導を?

まずは着物を着て歩くこと、お辞儀をすることから始めたのですが、2人とも筋は良かったんです。日本の踊りは腰がグッと入らなければいけないのですが、特に女形は太ももの筋肉が大事。そのトレーニング後に演目に入っていきました。芸は盗むものと言いますが、どんどんいいところを取っていって、僕たちから見て何も違和感がなくなるまでは早かったですね。

高山のお稽古場でもお稽古されたと聞きました。

そうなんです。僕は撮影に入ってから、ほぼ3ヶ月ずっと一緒にいたのですが、クランクイン前の2月の終わりにはここで合宿をしたんです。東京にいるとお稽古が終わればすぐに普段の生活に戻ってしまうから、帰れない高山で集中してお稽古しました。子役の2人も来ていて、みんなで〈洲さき〉で食事をした時、冒頭の料亭シーンに似ているからやってみれば?と2人を踊らせたら、雪まで降ってきて。彼らが役を演じる上でもすごくいい体験だったと思います。

高山のお稽古場にて。
「ここでの合宿の時は、この2階で僕の料理でお昼を食べたり。
高山の空気の中でお稽古をしました」。

そうした指導の元の劇中の演目ですが、お衣装も演奏も本物で説得力がありました。

監督が全部本物でなければ、とこだわりましたからね。この映画を見て歌舞伎に関心を持つ方が増えて、歌舞伎の集客も増えています。日本って、自国のものに目覚める周期みたいなものがあると思うんです。携わらせていただいたこの映画が、日本の文化に目覚める、そんなきっかけになれたらうれしいですね。

11月26日(水)〈GINZA SIX〉観世能楽堂にて、
市川中車・尾上右近・片岡千之助と共に「谷口裕和の会」を公演!
問い合わせ 080-9388-3775。

高山生まれ。料亭「洲さき」にて育ち、人間国宝西川扇蔵、梅津貴昶に師事。26歳より流派に所属しない舞踊家として活動。「菁風会」主催。映画「国宝」の「振付」(指導)を手がける。

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