高山発展提灯楼の会 会長 奥田佳世
岐阜県立高山工業高等学校 建築インテリア工学科 3年生 平野晃誠/電子機械工学科 3年生 清水統至

末広町から初田町にかけての一本道に並ぶ24張りの提灯。こだわりの白い提灯は、厳かな雰囲気を出しながらも暖かく品がある。
「飛騨高山という文化的な町には提灯が似合う。灯りを灯すことで人通りを増やしたい」そう話すのは、〈高山発展提灯楼の会〉会長の奥田佳世さん。2022年、コロナ禍からの再起をかけてこのプロジェクトを発起。長い調整期間と開発・施工を経て、2025年3月末に設置が完了した。提灯には店名と2次元コードが掲載されており、スマホで読み込むと、店舗情報を簡単に閲覧できる。Googleマップだけでは伝わりきらない情報、例えば、子どもの入店や店内での動画撮影の可否、カラオケの有無、席数などがさまざまな利用シーンを想定した情報が掲載されている。
飲み屋街ならではの華やぎが感じられ、しかも観光客も地域の人達も安心して飲食が楽しめる、そんな通りにしたいと始まったこの企画には、〈岐阜県立高山工業高等学校〉の建築インテリア工学科、電子機械工学科にも協力を仰いだ。見どころは、電子機械工学科が製作した電飾。高山祭で曳く祭屋台のLED化のために平成25年当時の生徒らが、江戸時代からの製法を守り続けている伝統工芸「三島和ろうそく店」監修のもと研究開発し、代々生徒が提灯のLED化を請け負ってきた。

その技術を応用し、この提灯では炎のゆらぎや色味を電子制御により再現する。「和ろうそくの光量では目立たないので、看板の明るさに耐えられ、かつ風情を残したギリギリを狙いました」そう話すのは3年生の清水くん。建築インテリア工学科が製作した屋根付きの提灯台は檜で作られており、「屋根裏の細部までこだわっているので覗き込んで見てほしい」と平野くん。多くの人に「見てもらえて役に立てる」そんなものづくりの機会に、ワクワクしながら取り組んだという。
着想から設置までの3年。ハプニングの連続だったと奥田さんは振り返る。道路に関わる法律や建築物構造、提灯や提灯台の設計など、飲食店業では馴染みのないあらゆる知識をその都度勉強しながら奔走した。「“お店を知ってほしい”“活気づかせたい”など、店主それぞれが思いを持って参画してくれたが、不安も戸惑いもあったと思う」。初めての試みにはさなざまな意見があるし、“一帯”として動くのは簡単ではない。
街路灯やカーブミラーなども、元々は各地域の住民がアイデアを持ち寄って整備していったものだが、それらも経年劣化はあり、今後もメンテナンスや新設は必要になる。「自分たちの町だからこそ、自分たちの力で出来ることを、一つひとつやってきたい」と思いを語る奥田さん。その前向きな言葉に地域の明るい未来を感じる。